築古戸建を土地値以下で買う判断軸|利回りより出口を先に計算する
2棟目を検討中のサラリーマン大家向け。空き家の築古戸建Aを契約後に業者へ転売して200万を手にした話と、戸建Bを土地値以下で取得して保有している話。50坪×26万円・75坪×10万円の数字で、土地値以下で買う判断軸とインカム・キャピタル・担保の意味を書きます。
利回り10%——こう書かれた物件資料を見ると、つい気持ちが乗ってしまう。
私も最初はそうだった。1棟目を買うときに見ていたのは、ほぼ表面利回りと家賃手取りシミュレーションだけ。CFが回るかどうか、月いくら残るか、それが世界のすべてだった。
転機は、信金の担当者と物件資料を眺めながら雑談していたときだ。
「この物件、土地値はいくらで見てます?」
質問の意味がしばらくわからなかった。利回りが乗っていればいいんじゃないのか、と。でも、その後の話で、銀行から見える物件の景色と、私が見ている景色がまったく違うことに気づかされた。
それ以来、私は物件資料を見る順番を変えた。利回りの前に、土地値を計算する。
今回は、2棟目を検討しているサラリーマン大家向けに、私が築古戸建A(空き家・契約後に業者へ転売して200万円)と築古戸建B(保有中・450万円で取得)で実際にやった「土地値以下で買う判断軸」を、実数字込みで書く。利回りシミュレーションだけで2棟目の判断をするのが不安な人にとっては、視点を一段上げる材料になると思う。
利回り10%でも、土地値以下じゃないと負ける
最初に結論を書く。
築古戸建で勝つ条件は、土地値以下で買えていること。利回りが何%かはその次に来る話だ。
なぜか。利回り10%は「建物に値段がついた状態でも家賃が10%出る」という意味でしかない。建物の価値は経年でゼロに近づく。20年後、屋根を吹き替え、外壁を塗り直し、給湯器を交換し、それでもまだ住めるかという状態になっていく。建物価値は時間の関数で減っていく。
一方で、土地値は経年で増減する。立地と需給で動く。地方都市の住宅地なら、ここ数年は実勢価格がじりじり動いている肌感覚がある。
利回り10%の物件を買って、5年運用してCF200万円積み上がったとしても、売るときに買値以下でしか売れなければトータルでは負ける。1,000万円の物件を5年間で200万円CF回収して、6年目に700万円でしか売れなかったら、売却損300万円。差し引きで100万円のマイナスだ。
土地値以下で買えていれば、この計算が逆転する。
買値が土地値より下なら、最悪のシナリオでも「土地として売れば負けない」という出口が確保できる。建物が朽ちても、解体して土地として売る選択肢が残る。築古戸建で勝つということは、この出口の保険が効いた状態で、CFを乗せていく構造を作ることだ。
戸建A(空き家・転売)の数字:50坪×26万円で、契約1,000万→1,200万で業者譲渡
私の戸建A(地方都市・空き家の築古戸建)で、この構造を実数字で見てもらいたい。
戸建Aのスペック
- 土地:約50坪強
- 実勢販売価格:坪あたり26万円程度
- → 実勢土地値:約1,300万円
- 契約価格:1,000万円
- 業者への譲渡価格:1,200万円
- 手元に残った金額:200万円
契約価格1,000万円に対して、実勢土地値は約1,300万円。300万円分、土地値以下で契約できていたということになる。
戸建Aはオーナーチェンジではなく、空き家の築古戸建だ。だから家賃収入はゼロ、運用実績もゼロ。私は「これから自分で客付けして運用する」つもりで契約した物件だった。
ところが、決済して名義変更する前に、地元の不動産業者から「この値段で買い取らせてほしい」という打診が来た。私は名義を一度も自分に変えないまま、契約上の地位を業者に譲渡する形でこの取引を畳み、差額の200万円を手にした。運用に入る前に、土地値の力で200万円が動いたということになる。
このとき私はまだ法人化前。本業の副業禁止規定もあるので、この200万円は最終的に法人スキーム側に集約している(資金の入り口の話は「合同会社で法人化した理由」で書いた)。
ここで言いたいのは、運用に入る前段階でも、土地値以下で契約できていれば「保険」が効くということだ。CFや利回りシミュレーションをいくら回しても、この種の動きはシミュレーションに乗ってこない。土地値という、もうひとつのモノサシを持っているかどうかで、こういう判断ができるかどうかが分かれる。
戸建B(保有中)の数字:75坪×10万円で、買値450万円・含み益約300万円
戸建Aを売却した後、別エリアで取得したのが戸建B(地方都市・保有中)だ。Aとはまったく別エリアで、坪単価のレンジも違う。
戸建Bのスペック
- 土地:約250㎡(約75坪)
- 実勢販売価格:坪あたり9〜11万円
- → 実勢土地値:約680〜830万円
- 購入価格:450万円
- 家賃:月5万円
- 返済:月4万円
- 月CF:約1万円
買値450万円に対して、実勢土地値は中央値で約750万円。約300万円分の含み益を抱えた状態で保有していることになる。
戸建Aと比べると、坪単価は1/3〜1/2。エリアによって全然違う。でも構造はまったく同じだ。買値が実勢土地値を下回っていれば、出口が保険として効く。
戸建Bのインカム(月CF1万円)は正直言って薄い。20年保有してもCFの積み上げは240万円程度にしかならない。それだけ見れば「割に合わない」と感じる人もいると思う。
でも、含み益約300万円が乗っているので、最悪、明日売却しても損は出ない。むしろ売却益が乗る可能性が高い。さらに、保有していること自体が次に書く「担保」として効いてくる。
土地値の確認方法:私が実際にやった3ステップ
ここで、実際に私が土地値を見るときの手順を書いておく。築古戸建を検討するなら、物件資料を見た瞬間にこの3ステップを回す癖をつけるといい。
ステップ① 路線価で当たりをつける
国税庁の路線価図で、物件の所在地番から路線価を引く。路線価は実勢価格の8割程度と言われているので、路線価÷0.8でざっくり実勢の目安が出る。
例:路線価が1㎡あたり3万円 → 実勢は1㎡あたり約3.75万円 → 50坪(165㎡)なら約620万円
これは1分で終わる。物件資料を見たらまずこれをやる。
ステップ② 国交省「土地総合情報システム」で取引事例を見る
国交省が公開している土地総合情報システムでは、過去の不動産取引価格を地区単位で検索できる。同じ町・同じ字での過去の取引価格が見られるので、路線価よりも実勢に近い数字を拾える。
私の場合、路線価で当たりをつけた後、ここで近隣の実勢取引を確認して数字をすり合わせる。
ステップ③ 業者ヒアリングで最終チェック
最後に、地元の不動産業者に「このエリアの坪単価感覚は?」と直接聞く。これが一番早いし、一番リアルだ。
業者は商売柄、エリアの相場感覚を肌で持っている。「この値段なら出回らない」「この坪単価なら買い手はつく」という感覚は、ネットの数字よりも実態に近いことが多い。
懇意の業者がいるなら気軽に聞ける。いない場合は、複数の業者に同じ質問をして数字を突き合わせる。極端な乖離がなければ、それがそのエリアの実勢に近い。
土地値以下で買えると「インカム+キャピタル+担保」が同時に効く
土地値以下で買えた築古戸建には、3つの効用が乗ってくる。戸建Aと戸建Bは、それぞれ違う形でこの効用を見せてくれた。
① インカム(家賃収入):月CFが薄くても、20年単位で見ると返済が進み、家賃比率が手取りに変わっていく。戸建Bの月1万円も、20年で約240万円。買値の半分以上を回収できる計算だ。戸建Aは運用していないのでこの効用はゼロだが、保有して運用に入っていれば戸建Bと同じ構造で家賃が積み上がる。
② キャピタル(売却益・転売益):買値(または契約価格)が土地値以下なら、出口で損が出にくい。戸建Aのように運用に入る前でも、土地値の力で業者から買い取り提案が来て200万円が動くことがある。戸建Bも、いま売れば含み益約300万円が乗っている。出口で投資家として勝てる、もしくは少なくとも負けない構造。
③ 担保価値:築古戸建を所有していること自体が、次の融資の担保として効く。これは法人で2棟目以降を狙うサラリーマン大家にとって特に大きい。
戸建Bを保有していることは、信金の担当者との会話の中で「この方は実物資産を保有している」という評価につながった。完全な手ぶらで法人融資を申し込むのと、含み益のある戸建を1棟持っている状態で申し込むのとでは、同じ案件でも見え方が違う。
新築アパートや区分マンションは、買った瞬間に物件価値が下がる。融資直後の含み損状態で、担保としての強さは限定的だ。一方、土地値以下で買った築古戸建は、買った瞬間から含み益を乗せている。担保としての厚みが違う。
戸建Aは「②キャピタルだけ」、戸建Bは「①②③すべて」。土地値以下で買えていれば、運用に入る前から出口の保険が効き、保有すれば3つの効用が同時に効く。これが利回りシミュレーションだけ見ていたら絶対に出てこない結論だ。
土地値以下で買えないときはどうするか
ここまで「土地値以下で買え」と書いたが、当然、買えないエリア・物件もある。
特に都心や駅近の人気エリアは、土地値以下で出てくる築古戸建はほぼない。出てもすぐ業者間で消える。サラリーマン大家がアクセスできる現実的なゾーンは、地方都市の住宅地に絞られる。
私が戸建A・Bを取得できたのも、地方都市の住宅地で、利回り重視の投資家が見過ごしがちなエリアを当たったからだ。利回り高い物件を探している人は、こういう「地味だけど土地値で底が固い」物件を素通りしがちで、そこに勝機がある。
逆に、土地値以下で買えない都心・駅近を狙うなら、CF重視・新築・区分など、別のロジックで戦う必要がある。自分のフィールドがどこにあるかを最初に決めて、そのフィールドのルールで戦うことが大事だと思う。
法人化のタイミングや融資戦略については、「サラリーマン大家が法人化するベストタイミングはいつか」、「2棟目の融資はどう通したか」も合わせて読んでもらえると、土地値判断と融資判断がつながって全体像が見えるはずだ。
物件選定の他の判断軸については「物件選定の軸:私が築古戸建で見ている5つのチェックリスト」に書いた。土地値はその中の最重要項目だが、唯一の軸ではない。
まとめ:利回りシミュレーションを開く前に、路線価図を開け
2棟目を検討中のサラリーマン大家にとって、1棟目で慣れ親しんだ「利回り+CFシミュレーション」だけで判断するのは、保険のかかっていない投資になる可能性がある。
整理すると、
- 利回りは時間で減る(建物価値が経年で下がる)
- 土地値は時間に強い(地方都市の住宅地は需給で動く)
- 土地値以下で買えていれば、出口で負けない
- インカム+キャピタル+担保の3点セットは築古戸建ならでは
- 業者ヒアリングは1分の路線価チェックの後に
私自身、戸建A・Bの2棟ともこの判断軸で動いた。戸建Aは契約後に業者へ譲渡して200万円、戸建Bは保有中で約300万円の含み益。利回りシミュレーションだけ見ていたら、この2棟は動かせなかったと今でも思う。
物件資料を開いたら、利回りより先に路線価図と土地総合情報システムを開く。これだけで、2棟目以降の物件選びの解像度が一段上がる。築古戸建で2棟目を検討しているなら、この順番だけは試してみてほしい。
物件選びを体系的に学びたい方へ
私自身、最初は本とYouTubeで独学で始めたが、土地値や融資評価の話になると、独学だけでは届かない領域があった。無料で体系的に学べる選択肢として、Financial Academyの不動産投資スクールは東京・大阪・名古屋・WEBで開催しているので、教室に通えなくても受講できる。
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副業禁止のサラリーマン大家 / 法人スキーム実践中
30代の会社員。築古戸建で個人購入 → 妻名義法人で2棟目を取得。 法人融資で3棟分契約解除という授業料を払った経験から、 融資・節税・物件管理の「数字と戦略」をリアルに発信しています。
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