太陽光発電付きアパートのリアルな収益と落とし穴|月8.4万円が口座に入るまで
築古木造アパートに搭載された太陽光発電のリアル。月8.4万円の売電収入は見込めるが、買って3ヶ月、まだ口座に入っていない。FIT・契約書・卒FIT後の見落としを実体験で書きました。
「太陽光発電付き」というキーワードは、私が2棟目のアパートを選ぶときの決め手のひとつだった。
表面利回り10%に加えて、屋根からも年間100万円近い売電収入が乗ってくる。資料を眺めながら、率直に「これは美味しいな」と思ったのを覚えている。
実際、2026年4月の検針票を見ると 2,000kWh・約84,000円。月8万円台の上乗せがあるなら、家賃と合わせて月20万円台のキャッシュフローが見えてくる計算だ。
ただ、ここに正直な話を書いておく。
この84,000円は、まだ私の口座に入っていない。
太陽光付きアパートは、買う前のシミュレーションと、買ったあとのリアルとの間に、それなりの距離がある。今回は、屋根に太陽光が乗っているアパートを保有して気づいた、「見えない数字」と落とし穴をできるだけそのまま書いておきたい。
私のアパートに乗っている太陽光のスペック
物件のおさらいから。
- 構造・築年数: 木造・築13年
- 戸数: 10戸
- エリア: 地方都市
- 物件価格: 8,300万円(諸費用込みで総事業費8,900万円)
- 表面利回り: 10%
このアパートの屋根に、ほぼ全戸数分の屋根を埋めるかたちで太陽光パネルが載っている。FIT(固定価格買取制度)を使った産業用太陽光で、買取期間は20年の契約だ。
FITとは、再生可能エネルギーで発電した電気を一定期間・一定価格で電力会社に買い取らせる制度のことだ。10kW以上の産業用なら、固定単価で20年買取が一般的になる。
ここで一つ、自分でも反省している点を書く。
正確な売電単価が、いまの私の手元にない。
理由はシンプルで、FITの契約書を管理会社に預けたままになっているからだ。発電量2,000kWhに対して入金見込み84,000円なので、単純に割り算すれば約42円/kWh。築年数から逆算すると2013年前後の認定で、当時の単価とも辻褄は合う。
ただし、これはあくまで「逆算した推測」だ。本来であれば、投資判断の根っこになる売電単価を所有者が把握していない、という状態は望ましくない。この記事を書きながら、近いうちに契約書を取り寄せることに決めた。
設置費用については、物件価格に含まれている。後から追加投資が発生していないという意味で、ここはありがたい条件だった。
月8.4万円・年100万円の手応え
数字を整理する。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 4月検針(月) | 約84,000円 / 2,000kWh |
| 想定年間売電収入 | 約100万円 |
| 物件価格に対する上乗せ利回り | 約1.2% |
家賃ベースの表面利回り10%に、太陽光分の約1.2%が乗る。実質的にはスタートラインで11%相当の収益力がある計算で、地方都市の築古木造アパートとしては、悪くない数字だと思う。
「築古木造アパートの表面利回り10%は本当に儲かるのか」で家賃ベースのキャッシュフローを公開しているが、太陽光を加味するとあの記事の手残り238万円が、実質的にもう少し厚くなる印象だ。
ただし、これは「満額が予定どおり入金された場合」の話だ。現時点での私の口座残高にこの84,000円は反映されていない。落とし穴の一つ目は、まさにここから始まる。
落とし穴①:名義変更のラグで、入金が遅れている
買った直後、もっとも面食らったのがこれだ。
3月分の売電は、まだ 前所有者の口座に振り込まれている 状態にある。
不動産の所有権は決済日に移っているのに、電力会社側のFIT契約名義の切り替え手続きはそれと同期しない。書類のやり取り、設備認定の変更、振込先口座の登録更新——複数の手続きが噛み合うまで、売電収入は前オーナーのところに着金し続ける。
私のケースでは、
- 3月分: 前所有者に着金済み(後日、こちらに精算される予定)
- 4月分: 名義変更が間に合っておらず、まだ未確定
という状況だ。後日まとめて精算されるとは聞いているが、「いつ」「いくら」「どのルートで」戻ってくるかについては、現時点ではっきりしていない。
ここから学んだことは2つある。
ひとつ目は、太陽光収入をキャッシュフロー計算に込みで返済計画を組まないこと。家賃収入だけでローンを返せる前提を最低ラインとして引いておかないと、最初の数ヶ月で資金繰りが詰まる。私の場合は家賃ベースで返済が回る設計にしていたから問題なかったが、ギリギリで組んでいたら危なかった。
ふたつ目は、名義変更の進捗は能動的に追わないと進まないということ。電力会社・管理会社・前所有者・自分の4者で書類が回るので、誰かが止めると全体が止まる。「待っていればそのうち」と思っていると、半年経っても入金が始まらないケースもあると聞く。
「不動産投資で失敗しない物件選びの軸」では「キャッシュフロー」と「出口」の2軸で物件を見ると書いたが、太陽光付きの物件を見るときは、ここに「入金タイミングのリスク」がもう一段乗ってくる、という感覚を持ったほうがいい。
落とし穴②:契約書が自分の手元にない
すでに少し触れたが、これも個人的にはしっかり書いておきたい落とし穴だ。
私は管理会社にFIT契約書を預けたままにしている。設置時期も、正確な売電単価も、契約期間の終了日も、自分の頭で正確に答えられない。
これは投資家としてマズい。
家賃の表面利回りなら覚えていても、太陽光の単価とFIT残期間は意識から抜け落ちる人は多いと思う。物件価格に込みで、しかも入金が始まる前に保有しているような状態だと、なおさら数字が「他人事」として処理されてしまう。
具体的に押さえておくべき数字はこのあたりだと思っている。
- FIT認定単価(円/kWh)
- 設備認定日と買取開始日
- 買取期間の終了予定日
- 発電容量(kW)
- 想定年間発電量(kWh)
- 過去数年の実績発電量・売電実績
このうち、私が現時点で自信を持って言えるのは「容量はおそらく10kW以上の産業用」「直近の月間発電量は約2,000kWh」の2つだけだ。残りはすべて契約書を取り寄せないと正確な数字が出ない。
書きながら気がついたが、これは融資審査で銀行から再質問が来たら詰むレベルの状態でもある。次の物件を法人で買い増す前に、ここは整理しなおさないといけない。
落とし穴③:卒FIT後を、私はまだ何も考えていない
3つ目はもっと深い話だ。
FITは20年契約。築13年で買ったアパートに乗っている太陽光なら、買取期間の終了は 9年もない先の話 になる。
卒FIT(FIT期間が終わった発電設備)の売電単価は、相対契約で8〜10円/kWh前後に落ちるのが現状の相場感だ。今の42円(推定)から見ると、単純計算で 収入が4分の1以下 になる。
84,000円が、20,000円弱まで下がる。
| 区分 | 月収入(目安) | 年収入(目安) |
|---|---|---|
| FIT期間中 | 約84,000円 | 約100万円 |
| 卒FIT後(売電のみ) | 約20,000円 | 約24万円 |
選択肢としてあり得るのは、
- 自家消費に切り替える(共用部の電気・近隣の自社物件で消費)
- 蓄電池を導入してピークシフト・自家消費率を上げる
- 別の電力会社に売電契約を切り替える(条件交渉)
- パワコンや屋根の状態をみて、撤去・更新を検討する
このあたりだ。書き出してみると検討すべきことは多い。
ただ正直に書くと、現時点で私はこれらを真剣に検討していない。9年先の話だ、という距離感のまま、目の前の融資・物件運営・税務に意識が向いている。
ここを書きながら反省した。9年は、子どもの教育費のピークと重なるタイミングでもある。「9年後に収入が4分の1になる」事実は、家計設計と無関係ではない。今のキャッシュフローのうち、何割が「9年で消える性質のお金なのか」を理解しておくのと、知らずに使い切ってしまうのとでは、10年後の景色がだいぶ違ってくる。
落とし穴④:メンテと災害リスクは、現時点で「運がいいだけ」
トラブルらしいトラブルは、保有してから今まで一度も起きていない。
ただこれは「運用がうまい」のではなく「単に運がいい」だけだ、と自分に言い聞かせている。
太陽光発電で実際に発生し得るコスト・リスクをざっくり挙げると、
- パワコン(パワーコンディショナー)交換: 寿命10〜15年・1台あたり数十万円。築13年なら、そろそろ交換タイミングが視野に入る
- パネルの劣化・故障: 経年で発電量は徐々に低下。1〜2割の出力低下は20年スパンで普通
- 屋根防水との関係: パネルが乗っている屋根の防水修繕がしづらくなる
- 台風・雹・落雷: 損害保険でカバー可能だが、契約内容の確認は必須
- 出力抑制: 電力会社の指示で売電を停止させられる地域がある(主に九州・四国エリア)
私のケースは、
- 築13年でパワコンの交換時期はこれから
- 出力抑制が出やすい地域ではない
- 火災保険に動産特約・電気的機械的事故特約をつけているかは未確認(これも近いうちに見直し予定)
つまり、「いまトラブルが起きていない」のは事実だが、これからの9年間に 一度もコストが発生しない、と仮定するのは楽観的すぎる。
太陽光付きアパートを検討している人に、私が伝えたいこと
ここまで書いてきた内容を、検討段階の人向けに整理する。
良い面
- 屋根の上で勝手に発電するキャッシュフロー源は、家賃と独立した収入になる
- FIT期間中は買取単価が固定されるので、売上のブレが家賃より小さい
- 物件価格に設備が込みなら、追加投資なしで上乗せ利回りが手に入る
注意すべき面
- 名義変更のラグで、最初の数ヶ月は入金が遅れることがある
- 契約書・売電単価・FIT残期間は、所有者として最低限は把握する
- 卒FIT後の収入は3〜4分の1に落ちる前提で、家計設計に組み込んでおく
- パワコン交換などのメンテ費用は、9〜15年スパンで必ず来ると思っておく
太陽光付き物件は、表面の数字が良く見えやすい。ただ「数字が良いから良い物件」という判断には、もう一段の確認作業が必要になる。
少なくとも、私のように 入金が始まる前から保有を始めて、契約書すら手元にない状態 は、本来であれば物件取得前の段階で整理しておくべきだった話だ。
まとめ:見えない数字こそ、自分で管理する
太陽光発電付きアパートを実際に保有してみて、いちばん強く感じたのはこれだ。
物件価格に含まれている設備ほど、自分の意識から抜け落ちる。
家賃は通帳に毎月入ってくるから、利回りも空室率も意識する。一方で、太陽光は「乗っているもの」としてアパートに付随する扱いだ。物件選定の段階で「太陽光付き」をプラス材料として評価したのに、いざ買ってしまうと、その数字が手元にない——これは私自身が反省している部分だ。
この記事を書きながら決めたことを、最後に書き残しておく。
- 管理会社からFIT契約書を取り寄せる
- 売電単価・買取期間終了日・年間発電実績を、自分のメモに転記する
- 卒FIT後の方針を、今年中に税理士・管理会社と一度話す
- パワコン交換・火災保険の特約状況を確認する
地味な作業だが、ここを押さえないまま3棟目に進むのは、同じ落とし穴をもう一度作るだけだと思う。
太陽光付きアパートは、間違いなく強い武器になる。ただ「武器を持っている」と「武器を使いこなしている」は別の話だ。私はまだ前者の段階にいる、というのが、保有3ヶ月時点での偽らざる感想だ。
さる
副業禁止のサラリーマン大家 / 法人スキーム実践中
30代の会社員。築古戸建で個人購入 → 妻名義法人で2棟目を取得。 法人融資で3棟分契約解除という授業料を払った経験から、 融資・節税・物件管理の「数字と戦略」をリアルに発信しています。
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