銀行に「売買投資には融資しない」と言われた話|築古平屋4戸セットを見送った理由
土地値以下で出口の見える築古平屋4戸セット。融資打診で銀行に「賃貸業に融資するのであって、売買投資には融資しない」と断られた経験から、銀行の本音と物件選定の軸を書きます。
副業禁止の会社員として本業を続けながら、妻名義の合同会社で2棟目を持っている「さる」と申します。
法人で物件を当てていた時期、ある築古の平屋4戸セットを見つけました。土地の実勢価格が購入価格を明らかに上回っていて、最悪でも更地にして売れば確実に利益が出る——そんな物件です。
「これは行ける」と確信して、信用金庫に融資を打診しました。
返ってきた言葉が、自分の物件選びの軸を根本から変えるものでした。
「不動産賃貸業に融資するのであって、売買の投資に融資するわけではないんですよ」
このひとことが、いまも頭の中に残っています。今回はその物件の話と、銀行が法人融資で本当に見ているものについて書きます。
結論:銀行は「賃貸業の収益性」しか見ていない
先に結論を書きます。
私はその物件を、土地値以下+出口確定という不動産売買の論理で評価していました。一方で、銀行が評価していたのは運用中の賃貸業として成り立つかどうかだけ。
両者の視点はまったくの別物で、私の評価軸では「絶対に儲かる物件」でも、銀行の評価軸では「融資できない物件」になる。この断絶を理解していなかったのが、見送りに繋がった最大の理由でした。
法人で融資を引いて拡大しようとしている人は、自分の物件評価と銀行の融資評価が違う角度であることを、最初に頭に入れておいた方がいい。私は、これを実体験で食らうまで分かっていませんでした。
どんな物件だったか
その物件は、地方都市にある築古の平屋4戸セットでした。
具体的な数字は伏せますが、ざっくり以下のような物件です。
- 築年数:相当古い(築40年以上)
- 構造:木造平屋
- 戸数:4戸(連棟ではなく独立した平屋が同一敷地にまとまっているタイプ)
- 入居状況:一部空室
- 購入価格:土地の実勢価格より明らかに安い
- 出口:解体して更地で売却するか、敷地を分筆して売却するか、どちらも成立する見込み
不動産屋から紹介を受けたとき、私が真っ先にチェックしたのは土地値でした。
近隣の坪単価から逆算した土地の実勢価格と、購入価格の差が大きかった。仮に建物の価値をゼロとしても、土地だけで購入価格は回収できる。それも、解体費用と諸費用を引いてもなお、利益が残る計算でした。
戸建Bのときと同じロジック、いやそれ以上に強い「出口で勝てる物件」だと判断しました(戸建Bの話はこちら:内覧なしオーナーチェンジの戸建を450万で買った話)。
なぜ「行ける」と思ったか
私がこの物件を「絶対に行ける」と思った根拠は3つあります。
1. 土地値だけで購入価格を超えている
最悪の場合でも、解体して更地にすれば購入価格は回収できる。これは下方リスクがほぼゼロという意味で、不動産投資のなかでも極めて有利な構造です。
2. 4戸セットなので、収益性のレバレッジも効く
仮に全戸を埋めれば、一定のキャッシュフローも見込める。出口だけでなく、運用中の収益も狙える物件。
3. 戸建てと違って、4戸あるのでリスク分散ができる
1戸が空室になっても、残り3戸の家賃でカバーできる。築古戸建単体よりはリスクが分散されている。
私の頭の中では「下方リスクなし・運用益も出せる・分散も効く」というスリーカードが揃っていました。融資が下りるかどうかは別として、物件としての評価は高かった。
これを信金の担当者に話したわけです。
信金から返ってきた言葉
打診から数日後、信金の担当者からこう言われました。
「物件としての評価は分かりますが、融資はお出しできません」
理由を聞いた私に、担当者はこう続けました。
「収益性が弱いんです。それと、入居されている方の属性も、当行の基準では厳しい」
最初に言われた「収益性が弱い」は、ある程度想定していました。築古4戸セットで、満室時の家賃想定がそれほど高くない物件だったので、表面利回りは見えていても、返済比率や運営コストを差し引くと残りが薄い。
ただ、私の頭の中では「出口があるから、運用が薄くても問題ない」という発想だった。だから粘って聞きました。
「最悪、5年後に更地にして売れば回収できる物件です。土地値で見ても、購入価格を上回っているので、銀行さんの担保評価としても十分なはずですが」
ここで返ってきたのが、冒頭のあの言葉でした。
「不動産賃貸業に融資するのであって、売買の投資に融資するわけではないんですよ」
電話越しに、頭を冷水で冷やされた気分になりました。
銀行の論理:賃貸業 vs 売買投資
担当者の言葉を、自分なりに整理するとこうなります。
銀行が融資する対象
- 月々の家賃収入で返済できる賃貸業
- 入居者がいて、長期的にキャッシュフローが回り続ける事業
- 万が一返済が滞っても、賃貸として再運用できる物件
銀行が融資しない対象
- 売却益(キャピタルゲイン)を狙う投機的な売買
- 短期での出口前提の物件
- 賃貸業として成立しにくい物件
ここで重要なのは、物件の担保評価が高くても、賃貸業として弱ければ融資は出ないということです。
私は「土地値以下で買って、最悪は更地で売れば回収できる」という売買投資の論理を持ち込んでいました。でも銀行から見ると、それは「賃貸業の融資申し込みではなく、売却益狙いの投機への融資申し込み」に映る。
銀行は、月々の返済原資を家賃収入から期待しています。出口の売却益から返済する前提の融資は、銀行にとってリスクが高すぎる。なぜなら、不動産は売れる時期が読めないから。「いつでも売れる」と思っているのは買い手側の幻想で、実際の市況は数ヶ月〜数年単位で変動します。
担当者が言いたかったのは、「あなたの物件評価の論理は理解できる。ただ、当行が融資する対象は、その論理ではなく、賃貸業として安定的に回るかどうかだ」ということでした。
「入居者の属性」とは何だったのか
もうひとつ言われたのが「入居者の属性」でした。
賃貸物件において、入居者の属性は銀行融資にも影響します。
築古4戸セットで、家賃水準が低い物件には、それに見合った属性の入居者が集まりやすい。具体的には書きませんが、銀行が融資審査で「家賃の安定的な回収が見込めるか」を判断するうえで、入居者の属性は無視できない要素になります。
銀行の論理ではこうです。
- 家賃が滞納されると、返済原資が止まる
- 退去された場合、空室期間が長引くと返済が苦しくなる
- 入居者の属性が安定していないと、上記2つのリスクが上がる
これは差別とかではなくて、金融機関としてのリスク管理の話です。家賃保証会社の利用や、保証人のしっかりした入居者であれば、銀行の評価は変わります。でも築古4戸セットの場合、そこまで入居者を選別できる物件ではないことが多い。
私はこの観点を、まったく持っていませんでした。「入居者がいる=家賃が入る」としか考えていなかった。銀行は、その入居者が3年後・5年後も家賃を払い続けられるかまで見ています。
この経験で変わった3つのこと
この物件を見送ったあと、私の物件選定は明確に変わりました。
1. 土地値以下でも、賃貸業として弱い物件は買わない
出口が見えるから買う、という発想は危険。少なくとも法人融資を使って買う場合、銀行の融資審査を通せない物件は、そもそも選択肢に入らない。フルキャッシュで買えるなら別ですが、それなら法人を使う意味も薄い。
2. 入居者属性を、物件選定の段階で確認する
オーナーチェンジ物件を買うときは、入居者の属性・滞納履歴・家賃保証の有無を、契約前に確認するようになりました。これは銀行の融資審査にも影響しますし、自分自身の運営リスクにも直結します。
3. 銀行に「自分の評価軸」を押し付けない
これが一番大きい学びです。私は信金の担当者に「土地値で見れば」「出口で見れば」と粘って説明していましたが、銀行が見ている軸とズレた説明を重ねても、稟議は通りません。銀行が求めている情報(賃貸業としての収益性・入居者の安定性・物件のエリア需要)に答える形で資料を出さないと、土俵に乗らない。
それ以降、融資打診のときは**最初に「賃貸業として、月々これだけのCFが出ます。返済比率は◯%です。エリアの空室率は◯%です」**という順番で話すようになりました。土地値や出口の話は、最後に補足として添えるだけ。
売却してかなり利益が出た、らしい
その物件は、私が見送ったあと別の投資家が買いました。
噂で聞いた話ですが、その方はフルキャッシュで購入し、半年ほどで売却したそうです。私が想定していた通り、土地値で売却できて利益が出たと聞きました。
これを聞いて、悔しかったかと言われれば、それなりに悔しかった。ただ、自分の手持ちキャッシュではフル買いできる物件ではなかったし、法人融資を使う前提では選べなかった物件です。
それに、こう考えるようになりました。
- フルキャッシュで売買差益を狙う人は、不動産投資家ではなく不動産事業者
- 私がやろうとしているのは、融資を使って長期で賃貸業を回す不動産投資
両者は似て非なるもので、評価軸も違うし、扱える物件も違う。銀行の言葉を借りれば、売買投資と賃貸業は別の事業です。私は後者をやるために法人を作ったので、前者の物件を取りに行く必要はなかった。
そう整理してからは、土地値以下の物件にむやみに飛びつくことがなくなりました。
同じ立場の方へ
法人融資を使って2棟目以降を狙っている方に伝えたいのは、自分の物件評価と銀行の融資評価は別物ということです。
特に「土地値以下」「出口で取れる」という言葉に魅力を感じる物件ほど、注意が必要です。それは投資家としての視点では正しくても、融資を引く前提では成立しない可能性が高い。
物件を見つけたら、買付を入れる前に自分の中で2つの審査をしてみてください。
- 投資家としての審査:土地値・出口・利回り
- 銀行としての審査:賃貸業の収益性・入居者の属性・エリアの需要
両方が揃った物件だけを、融資前提で取りに行く。片方しか満たさない物件は、フルキャッシュで買えるなら買えばいいし、それが厳しいなら見送る。
この線引きが、私が築古4戸セットを通じて学んだ最大のことでした。
銀行の言葉は冷たく聞こえますが、彼らが見ている景色を理解すると、融資の通し方も物件の選び方も変わります。連敗中の方は、断られた言葉のなかにヒントがあるはずです。
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副業禁止のサラリーマン大家 / 法人スキーム実践中
30代の会社員。築古戸建で個人購入 → 妻名義法人で2棟目を取得。 法人融資で3棟分契約解除という授業料を払った経験から、 融資・節税・物件管理の「数字と戦略」をリアルに発信しています。
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